現代のスペシャリティクーペ
BMW MINI クーペ

車名 MINIクーペ
型式 R58
駆動方式 FF
ミッション 6MT/6AT
エンジン 184ps/5500rpm 26.0s/1600〜5000rpm
試乗車 クーパーS

 お友達のMINIクーペ クーパーSを運転させてもらいましたので、インプレをば。

 正直、富山にあるMINIのディーラーはウチらのような純血クルマオタには非常に入りにくいので(ハッキリ書くと、全肯定以外は認めない欧州車マンセー的な押しつけがイヤ。)こういう感じで遠慮無く面白いクルマに乗れたのは非常に幸運!感謝です!

競合車 プジョー308CC、アルファブレラ、NCロードスター
スタイリング ★★★★☆

 どこから見てもMINI、ってスタイリング。オールドミニのイメージは微塵も残っていませんが、この世の中でのMINIといえばもうコレですね。

 この辺りの記号化、日本勢は下手ですねぇ。欧州や北米のメーカーは過去の資産を非常に上手く使うのに。日本メーカーももはや歴史もオリジナルデザインを持っているのだから、このへんしっかり見習って欲しい。

 さてこのMINIクーペ、聞く所によるとMINIロードスターが最初にあって、クーペはそこからの派生モデルだとか。まぁ確かに言われてみればAピラーとルーフの間に入ってるパーティングラインとか、オープンモデルの名残がありますね。

 ただ個人的には順序としてクーペ→コンバーチブル派生よりも、こちらのコンバーチブル→クーペの方がコスト的にも良いような気がします。

 しかもフツーとってつけた感が強くなる所を、MINIはブランドイメージの「ルーフは別カラー(別パーツ)」というイメージを逆手に取ってデザインしてるのは上手い手法だと思いますねぇ。

 しかしやっぱ、クーペモデルは格好イイ。MINIのハッチバックモデルはハッチバックモデルで十分の格好良いのだけど、同じデザインラインでもやっぱクーペは違うわ。ルーフラインの凝縮感とか、デフォルメっぽさすら感じるこのデザインは素晴らしくイイ。

 ちなみにこの友人のクルマはブルーのボディーカラーに白のTE37を履いていたのですが、なるほど、MINIハッチバックのレトロテイストよりもモダンな感じが強いMINIクーペはこういうレーシーな感じの方が似合うんだな、と。

エンジン、ミッション ★★★★☆

 ターボエンジンはパッと乗った感じ、170馬力ほどかな、といった印象。

 んでこのインプレ書くのに調べると184馬力。まぁ大体体感と同じ感じです。ええ、14馬力なんざ誤差ですよ、誤差(←ドヤ顔で)。

 これは自分の体感能力がスゴいとかじゃなくて、つまり過剰な演出や抜けなどが無く、非常に有効にエンジンパワーが使える、扱いやすいエンジンフィールという事。VW UP!や日産ノートのような3気筒エンジン独特のイヤ〜なクセはありません。

 トルクはさすがにターボエンジンだけありスイスイ前に出て行って、ちょっとルーズにポンポンとシフトチェンジしても加速していく柔軟さは非常にイイフィーリング。ただ滑らかな感じは強いけど、気持ちが盛り上がるビート感といったところはちょいと希薄。

 エキゾーストノートに関しては、正直それを楽しむものではないな、と。まぁターボエンジンって大体どれもこんな感じですけど。

 やっぱNAエンジンの管楽器っぽさや、それこそRB26DETTほどのレースフィードバックの血みたいなのじゃないから、音質に期待はそもそもNGです。

 シフトフィールはストロークを多めにとった柔らかい感じのもの。FR車などのミッション直結のソリッドな感じはないですね。
 ただ上に書いた通り、あんまり目を尖らせてシビアなシフトチェンジ、ってよりもある程度ルーズにシフトチェンジしつつ楽しい、ってのが狙いだと思うので、これはこれで良いセッティングだと思う。
足廻り ★★★☆☆

 硬ッ!!

 ってこの試乗させてもらったクルマは車高調(ブリッツ)に変わっているので、まぁ当然といえば当然、硬いです。ただボディが負けていないので、ブルブル感とかはないんですが、シートのクッションに柔らかさがない上にあからさまなバケット形状でもないのに妙にフィットする良いシートなので、まぁダイレクトにバシバシと。これ腰痛持ちは死ねますな。

 タイヤのカドの存在感が解る、とでもいいましょうか・・・手や腰に返ってくるグリップ感はホント、解りやすい。さらにこの剛性感ならちょっとやそっとのスポーツタイヤなら履きこなしそうな感じですね。ここはあえて細身のハイグリップタイヤ(NEOVAとか)が似合いそう。


 んでハンドリングは、よく新旧MINI共にゴーカート感、という表現を見かけますが・・・実際はそれほどダイレクトじゃありません。ノーズの短さからそういう風な感覚を受けますが、実際のハンドル操作に対する挙動はさほど機敏ではありません。クイックさでもダイレクトさでも上を行くクルマはいくらでもあります。

 ってかそもそも、ゴーカート感ってそんなにスゴい事or褒められる事なのか?と思います。正直、サス固めてブッシュ固めてステアリングギアレシオクイックにしたら、はい出来上がり、じゃないですか。グリップしようともヌケようともゴーカート感って言えるでしょ、それなら。(まぁ盲目的な外車オタにはその方が都合がイイのかもしれないけど。)

 そんなセッティング、疲れるだけだと思いません?

 さらに言うなら、FFでそんなところ狙っても無意味じゃないですか。MRでやればいいでしょ、そういうのやりたければと思います。FFでそういうのやろうってのが貧乏ったらしいというか、未練たらしいというか・・・FFにはFFのフィーリングがあり、それ相当のコーナリングテクニックがある。ならばその時にFFらしいテクニックを素直に反映できる事こそ最高なんじゃないか、と。そしてそれはゴーカート感とは全く逆の乗り味だと思うんですわ。

 さて、このMINIクーペはというと、上の通り、そこまで機敏じゃありません。が、ある程度のパワーをかけてアクセルを開けてもフロントタイヤが暴れないのは非常にイイ感じ。ストレートで踏んでも前が無駄に浮く感じも無くてパッとステアリング切ってもすぐに次の体勢に移れる安心感がある。

 切り込んでいってもちょっとフロントが強めではあるけど、巻き込むような感じが無くて扱いやすい。う〜ん、これ面白いなぁ。アクセルコントロールが楽しそう。もっと速度域が高くてアンダーが出た時の挙動、見てみたいなぁ。

インテリア ★★★★★

 ルーフにあるトグルスイッチがやっぱ雰囲気あってイイですな。リアウィングの操作ボタンとか、もう動かしてるとテンション上がります。

 あと前述の通り、シートがバケット形状じゃないのになかなかのフィット感。とくに縦方向の尻とか腰で挙動を感じるのは良さげな感じ。まぁサイドサポート無いのである程度飛ばすとすっ飛びそうになるんでしょうけど。

 あと面白いなと思ったのがウィンカー。軽く押すと、3回ウィンカーが点灯するだけ、グッと押し込むとオートキャンセラーが効くまでウィンカーが点灯するっての。コレが非常に便利。車線変更などでハンドル操作がさほど大きくならない時とか、オートキャンセラーが効かなくて手動でウィンカーレバー戻したりとか、そういうのが無い。これはホント、使い勝手が非常にイイので全てのクルマにコレ標準装備してくれよ!と思いました。

 ちなみに自分はこのインテリアこそクルマにおいて一番見るべき部分、と思ってます。だってオーナーがほとんど見るのって、ここじゃないですか。エクステリアってほとんど他人からしか見えないもんだし。

 MINIシリーズに共通する中央に大きくスピードメーター、ステアリング前にタコメーター、さてでは運転している時にコレを見るかといえば・・・

 まったく見ません。

 ええ、タコはレブギリギリまで使うようなシビアなパワーバンドのエンジンじゃないし、スピードも何km/hだとか、MINIにゃ野暮ってもんですわ。

 だがそれがイイ。

 こう、この場所にでっかくスピードメーターがある、このデザインがアリなんですよ。発進するまでの一瞬、絶対に目に入るMINI感、この雰囲気の作り方はやっぱ意味があります。

 NCロードスターのような無駄のないストイックなインテリアも良いものなのですが、こう無駄な部分がイコールでアイコンになっているのもまた良い。クルマの面白さはこういう多岐にわたる所にあるのが面白いですね。


総評 ★★★★☆

 所有欲をくすぐるスタイリング、そして長く疲れを感じさせないルーズさを内包したパワーユニット、これ面白いクルマですねぇ。

 なんというか、スポーツカーってより、スペシャリティクーペってイメージ。

 まぁ室内空間に関してはスポーツカーのRX-7とかよりもさらにミニマムではあるのですが、雰囲気は元祖デートカー・プレリュードのそれにそっくり

 本気で走るとハンパないのに、まったり走ってもOK、こういうスポーティなフレシキビリティを持ったクルマ、減りましたよね。マッチョかカジュアルかの両極端になって。

 でも実はクルマが主役じゃない、”パートナーとしてのクルマ”としてはこういうのが一番心地よかったりします。

 一般にオシャレなクルマ的なイメージが強く、さらには自動車雑誌などで前述のゴーカート感とか書かれ、なんかMINIのイメージが凝り固まっているような感じを受けますが、実際はそういうクルマでは無いと思いますし、むしろそういうイメージをMINIに求める人にはMINIは似合わないんじゃないかな、と思います。

 前者はクルマをオシャレの道具の一つでクルマそのものとしてみていないんだから何に乗っても一緒。後者は「ぽさ」で悦に浸ったり、あれこれご託並べたりしなくていいからドライビングがモロにタイムや挙動に出るMRに乗れよ、と言いたい。

 MINIを選ぶ理由は、面白いクルマが欲しい、この一点だけでイイと思います。

 まぁこれは富山のMINI取り扱いディーラーに言いたい事なんですが、プレミアム感とかブランド感とか、そんなのはどうでもいいんです。そういうのクルマに求める人は、ボディに純金でも貼ってればいい。一緒ですよ、本質的な下品さは。そういう下品さでクルマを覆い隠さないで欲しい。


 せっかくの良いクルマに、余計な脂をのせてほしくない。
































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