3気筒ミニプレミアムコンパクト
VW up!&ホンダN ONE

車名 VW up!
HONDA N ONE
型式 VW up! AACHY
HONDA N ONE JG1
値段 VW up! 149〜183万円
HONDA N ONE 115〜165万円
駆動方式 VW up! FF
HONDA N ONE FF/4WD
ミッション VW up! クラッチレス5速
HONDA N ONE CVT
エンジン形式 VW up!
75ps/6200rpm 9.7s/3000-4300rpm

HONDA N ONE(ターボ)
64ps/6000rpm 10.6s/2600rpm
試乗車 VW up! move up!
HONDA N ONE Tourer

 時代はダウンサイジング、3気筒エンジン搭載車にまでもカタログに”クオリティ”という言葉が踊るクルマが出てきました。

 確かに小さいなら安っぽくなくてはいけない、という決まりはなく、例えばトヨタIQなどは完全に割り切った感じはあるものの、ちゃんとしたクルマです。ただし、それは各個のメカニズムがそれなりに高品質なものをコンパクトにまとめた、というクルマであり、今までコストダウンの対象と言われるものを集め、それをクオリティ高く、というクルマはほとんどありませんでした。

 そこでVWとHONDAから出てきたup!とN ONE。サイズ的にも似ている上に、メカニズムの数字も似ていて、さらには値段も近い。

 さて、この2車、どんな感じなのでしょうか。

競合車
スタイリング VW up!★★★★☆
HONDA N ONE ★★★☆☆

 両車ともまず「格好イイ」です。

 up!のスパッと割り切った感じのデザインもいいし、N ONEのN360をモチーフにした感じも非常にいい。

 小さいけれど貧相、というイメージは両車とも皆無です。

 ただN ONEは正直、もっと車体高を低くして欲しかった。単体で見ると確かにさほど違和感は感じないのですが、元となったN360のデザインを見ると・・・縦方向への間延びがちょっと大きい。ドアが縦に広すぎて・・・もうちょっとドアを縦方向に狭くして、ガラス面積を大きくしても良かったんじゃないかなぁとも。

 具体的に言うと



 ↑これがN ONE
 ↓んでボディをちょいと短く。



 こっちの方が安定感あるよ、全然〜

 ただ2トーンモデルになるとそこら辺が上手くカバーされてあまり違和感なくなるので、やはりデザイン重視なら2トーンは必須かと。特に赤×黒や黄×黒は文句なしに格好イイ。





 up!はハッキリ言うとコストダウンの塊。リアゲートは分割せず、ガラス面で開くようになっているし、バンパーも薄っぺらい。だけどそれを見事にデザインの中に入れてしまっていて、コストダウンっぽさをこれっぽっちも感じさせない。よくよく見ると「なるほどなぁ」というようなもの。




 さらにはやっぱりup!は全高の低さがイコールで全体の安定感につながっていて、やっぱり背の高いクルマに比べて精悍。実際頭上空間もup!でも十分なので過剰な頭上空間は必要ないな、と改めて思った。

インテリア VW up!★★★☆☆
HONDA N ONE ★★★☆☆

 いつもは先に「エンジン・ミッション」なんだけど、今回は先にインテリア。

 さすがに質感フェチといわれるVWだけど、150万円からのクルマに高品質は不可能。ポロと比べて100万円ダウンなだけあって、基本的な品質は一般的な軽四レベル。シボも当たり前な感じで、内装にVWっぽさは皆無。




 N ONEにしても確かにちょっと小洒落てはいるけど、あくまで上辺だけ。プラスチックのペラペラ感はやはり軽四レベルを抜け出していない。

 両車とも質感や作りという意味ではほぼ同等。ならばデザインは、というと、個人的にはさっぱりしているup!の方が好み。

 ドアの鉄板向き出しな部分のボディ同色な所が実は自分のツボだったりします。

 いやホント好きなんですわ、ボディ同色鉄板。なんかいかにもな道具感があって。さらにデコレーションパネルも同等のボディカラーにしたらコーディネートならなお良し!(グレードによってはこのデコレーションパネルがシボ風のとかあるけど、それはNG!




 N ONEもデコレーションパネルとかイジりやすそうな部分はあるんだけど、なんか割り切り感が無いというか、イマイチ。

 シートに関してはどちらも同レベル。というかup!のシート、ありゃ商用車のそれですね。座れるだけ、って感じ。ベンチシート風のN ONEの方が座面そのものは広いけど、こっちもまぁその程度、ってだけ。どちらも「座れりゃいいんだろ?」といった感じです。




 ステアリングは同価格モデルになるとup!がウレタン、N ONEは本革ステアリング。up!の上位グレードになると本革ステアリングになりますが、相変わらずVWの本革ステアリングは糸が硬い。あとやはりコストダウンの影響がモロに出てて、どちらの本革ステアリングの革もイマイチ。正直、どちらもウレタンステアリングで十分です。




 あと内装は天井とかもペラペラでポコポコしてます。ちょっと経年劣化が怖いですね。特にup!は。


 ちなみに後部座席はというと、自分がドライビングポジションを取ると。N ONEは若干の余裕があるけど、up!は完全に膝が当たる。これチャイルドシート付けるのにも難しいんじゃないかなぁ。

 荷室はちょっとだけup!の方が広い、かな?程度でどちらも同程度。






 あ、あと最後に一つ。VW up!のリアガラス。懐かしのポップアップ型(ちょっと開くだけの。昭和のハッチバック車のリアガラスにあったような、アレ)なのですが、もちろん挟み込み防止な機能などありませんので、これ子供が窓を閉めようとしたら、多分指を挟みます。ちょうど子供が力を入れるとしたら、窓の隙間に左手入れて、右手でロックを操作するでしょうから。挟んでもゴムとかなんで切れたりはしないと思いますが、子供はパニクるでしょうね・・・親御さんは要注意です。

足廻り VW up!★★★★☆
HONDA N ONE ★★★☆☆

 やっぱ小さいクルマ=幅の狭いトレッドなのでストローク多めのゆったりした乗り味を諦めると、自然と堅めの足回りになるんですね。

 もっと三菱コルトのようなコンパクトカーでもゆったりとした乗り味のが増えてもいいと思うんですが、「キビキビしたステアリング」ってのがどうもBMW MINI以下のクラスでは理想とされてるっぽいので、両車とも似たような味付けになってます。




 とはいっても剛性感の違いがちょっと出てます。up!は振動が横にブルブルするのに対して、N ONEは縦にブルブルする、という。不快なのは縦の方なのですが、まぁはっきりいってどっちも剛性不足って印象を受けます。




 ちなみに同じ日に86にも試乗したのでなおさらその感じは強く受けましたね。さすがにシャッキリポンとしてますわ、86は。

 とはいってもup!とN ONEではタワーバーやロアアームバーを入れてもおつりが余裕で出る価格差なので、補強入れたN ONEと乗り比べてみたい、ってのもあります。(どうせ無限とかから出るでしょ)

 ブレーキのフィーリングは街乗りレベルならどちらも同じ。自然な効きは扱いやすくてイイです。実際フルブレーキングとかはしてないんでそれ以上は解りません。

エンジン、ミッション VW up!☆☆☆☆☆
HONDA N ONE ★☆☆☆☆

 ん〜〜っと・・・



 up!をホメてる自動車評論家、ならびにガイシャオタク、ちょっと前に出ろ!



 自分で試乗して、初めてup!の試乗記とか読んだけどな・・・なんだこのミッションについての言葉のごまかし方は!

 「ちょっとクセがある」とか「慣れが必要」とか・・・

 そういうレベルですらねぇだろ!

 ええ、乗りました、このクラッチレス5速に。発進時のレスポンスの悪さ、これはいい。まぁいい。これは我慢しよう、うん・・・だけどそのあとの変速のショックのひどさ、タイミングの悪さ、ハッキリ言って最低だぞ?

 例えるならアレだ、「自動車教習所の教官の気分になれる」だ。

 超絶ドヘタが運転するMT車のそれ。ってかシフトアップの時にガクン、意味不明なシフトタイミングでガクン、これさ、単なるストレスだわ。これならレスポンスダルダルの超初期のCVTの方がまだマシ!

 これ、市販していいレベルのクオリティじゃねぇぞ?

 なんですか?ガイシャ補正ですか?甘やかしですか?



 ハッキリと言えよ「ゴミみたいなミッションです!これ市販するか?ナメんなVW!」と。



 まぁ正直、ギャグみたいなもんですわ。恐ろしく出来の悪いMR-SのS/MTというか・・・というかトヨタが13年前に通り過ぎた場所に今VWは立っているんですか、そうですか。

 これさ、こんな出来損ないのミッション載せるくらいならエクストレイルディーゼルのように最初はMTだけ、とかで良かったんじゃない?日本人はATが〜とかそういうつもりなのか知らないけど、これでイイっての、よほどのクルマオンチか不感症だよ、マジで。

 自分の言ってる事がオーバーと思う人がいたら、試乗しに行ってくださいな。
 異論反論はそれからなら聞きますよ。

 正直DSGもそうだけど、VWってフツーのMT以外は力入れてないんじゃないかな、と思う。「MT乗れないんならこれで我慢してろや、HAHAHAHAHA!」ってメッセージ性すら感じるわ、俺。

 しかもさ、自動車評論家やガイシャオタクは好き勝手言っててもいいけど、ディーラーマンとかはそれも出来ないから、なんて言ってたと思う?

 「VWでコミ200万円で買えるクルマがあるといって注文にこられるお客様がいらっしゃるんですが・・・他の車種ならともかく、up!に関しては必ず試乗していただいています、乗っていただいた通りなにせ”コレ”ですから・・・」

 だってよ。いや、このディーラーマンの言う事は正しい。試乗してコレに納得して買うならともかく、それこそ雑誌を鵜呑みにして買ったら、ホントにキレるぜ、これ。まぁ他人の評価を鵜呑みにする人間は一度痛い目にあうべきとは思うけど、これはちょっと酷すぎるもんな。

 ちなみに3気筒エンジンの方はパワー感はあるけどやっぱり振動を押さえ切れていない感じが残る。安かろう、悪かろうがエンジンやミッションであるのは、さすがにちょっとクルマという工業製品としてどうかと思うわ。

 まぁ諸悪の根源は間違いなくこのクラッチレス5速で、もちろん本国にはフツーの5MTがあるんだから、これはもう日本人免許保持者に対する侮辱ともとれるよ。ハッキリ言って、フツーの5MTだったら3気筒エンジンのがさつ感を考慮しても、これ絶対イイクルマなんだもん。


 そして同じ3気筒でもこちらはターボモデルのN ONE。とはいえやはり660ccに加給してトルコンで一生懸命!な感じは従来の軽四と同じ。

 1000〜1300ccのコンパクトカーと同等の走り、というのが売りですけど、なんというか、「GT-RのRB26DETTとインプレッサとかランエボが同等の加速!」と言っているのに似ているというか・・・まぁ加速感は一緒かもしれないけど、フィーリングとか余裕がぜんっぜん違うんですわな。

 仮に同じ加速をしたとしても、リッターカーではまだマージンを残しての加速、こちらは限界ギリギリの加速、どちらが最終的な機械の寿命が長いか・・・こういうの比較する時はそこまで考えたいと思いますね。

 ちなみにミッションは当たり前のCVT。しかしup!の酷い変速を体験したあとだと、なんて滑らかなんだ!と錯覚してしまいます。フツーです、極々フツーのオートマです。

 スズキみたいなちょっとワイドでリッターエンジン載せたモデルとか出さないかな、と思ってしまいますね。まぁそれ言うとup!もポロとかの1.2リッターをMTで出せ、ってなってしまいますが。

総評 VW up!★★★☆☆
HONDA N ONE ★★★☆☆

 まぁこの2車を試乗して解るのは


 価格相応。


 ヒネリのない結果ですね。ただ化ける可能性が高いのはup!の方ですね。フツーの5MT持ってくるだけで「160万円ならアリ!」ってクルマですから。ただシートの出来や非電動のリアガラスとか、割り切りはそれ相当に必要ですが。

 もちろんN ONEもベースモデル+ターボでも価格的には悪くはないですが、いろいろつけていくとあっという間に200万円を軽く超えてしまうのは軽四規格としてもう完全に意味消失、です。だったら最初からもっと車幅に余裕持たせて、エンジンもNA1000ccとか積めよ!と。

 この2車を見て思うのは、「クルマをカタログショッピングする人向け」というイメージ。クルマの中身、というより、イメージありき。どうもそんな感じを受けます。

 「クラスを超えた」

 この言葉のうさんくささ、解るでしょうか。どちらのカタログにも、それっぽい言葉が並んでいます。

 ならこの両社のこの上のクラスのクルマは、いやさ競合他社のこの上のクルマは、それ以下でしょうか。


 up!の上位モデルだとヴィッツだとあのG'zモデルが買えちゃいます。
 比べましょうか?

 N ONEだとそうですね、スイフトだと欧州サス仕様のRSが買えますね。
 比べましょうか?

 サイズも、価格も、走りも、どれでも。

 全く超えていませんね。

 いや、最後妙に辛辣になってしまいましたが、どうもこの2車はイメージ優先で語られる事が多すぎるような気がして。同じ価格帯でも地味だけどもっと優秀なクルマがあるのに、と思ってしまいます。

 確かにup!もN ONEも雑誌などでは扱いやすいクルマだと思います。

 ええ、スイフトRSなんて華はありませんよ、ええ。上には派手なスイフトスポーツもありますし・・・でもものすごくイイクルマなんです。

 なんというか、クルマが機械製品よりもファッションな部分が多くなりすぎている感じが最近特に強く感じて・・・誰の言葉でもない、自分の価値観だけでクルマを選ぶ、なんかそういうのが薄くなってきているなぁって思ったので。






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